前立腺がんの手術後、
「尿もれがなかなか改善しない」
「パッドが手放せない」
こうしたお悩みを抱えている方は少なくありません。
しかも術後の尿もれは、
漏れなかった人が漏れるようになってしまう
ために、生活の質が著しく損なわれます。
これまでの治療には限界がある中で、新しい選択肢として注目されているのがPRP療法(多血小板血漿療法)です。
今回は、最新の論文をもとに、わかりやすく解説します。
前立腺がん手術後に尿もれが起こる理由
前立腺全摘除術では、尿道の周囲にある「尿道括約筋」がダメージを受けることがあります。
この括約筋は、
👉 尿を止める“最後の砦”
ここが弱くなることで、
- 咳や立ち上がりで漏れる(腹圧性尿失禁)
- 常に少しずつ漏れる
といった症状が出てきます。
従来の治療
現在の主な治療は以下の通りです
- 骨盤底筋トレーニング
→ 軽症には有効だが、重症には限界あり。
- 薬物療法
→ 効果は限定的。
- 人工尿道括約筋(AUS)
→ 非常に有効だが手術が必要。合併症(感染・再手術)あり。
「もう少し低侵襲で効果のある治療はないか?」
というニーズがありました。
PRP療法とは?
PRP(Platelet-Rich Plasma)は、
👉 自分の血液から抽出した“成長因子を多く含む成分”
これを尿道括約筋に注入することで、
- 組織の修復
- 神経再生
- 血流改善
を促すと考えられています。
👉 いわば“自己再生力を利用した治療”です
実際の研究データ
Leeらの研究では、
前立腺がん術後で全例パッドが手放せない状態の尿失禁患者に対し
尿道括約筋へのPRP注入を実施しました。
● 主な結果
ここでのポイントは、治療の結果の評価方法が
全般的改善度評価 (Global Response Assessment, GRA)
つまり患者さん自身が感じた効果を採用した点です。
GRA grade0(変わらなかった)
GRA grade1(少し良くなった)
GRA grade2(良くなった)
GRA grade3(かなり良くなった)
で評価しています。

治療後変化がなかったのは7.1%に留まり、
実に90%以上の患者さんに効果が認められました。
PRP療法のメリット
✔ 自己血を使うため安全性が高い
✔ 切らない治療(低侵襲)
✔ 外来で施行可能
✔ 繰り返し治療が可能
デメリット・注意点
✔ 効果には個人差あり
✔ 複数回の施術が必要なことが多い
✔ 保険適用外(自費診療)
👉 まだ「標準治療」ではなく、新しい治療選択肢という位置づけです
こんな方におすすめ
- 手術後の尿もれが改善しない
- 手術(AUS)には抵抗がある
- できるだけ自然な治療を希望したい
当院の考え方
当院では、
「専門性の高い医療を、気軽にクリニックで」
という理念のもと、
患者さん一人ひとりに合わせた治療提案を行っています。
PRP療法はまだ新しい治療ですが、
👉 “手術と保存療法の間を埋める選択肢”
として、今後重要になる可能性があります。
まとめ
前立腺がん術後の尿もれに対して、
これまでは
👉「我慢する」か「手術する」か
の二択になりがちでした。
しかし今は、
👉 PRPという“第3の選択肢”が出てきています
気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
Lee PJ, Jiang YH, Kuo HC. A novel management for postprostatectomy urinary incontinence: platelet-rich plasma urethral sphincter injection. Sci Rep. 2021 Mar 8;11(1):5371. doi: 10.1038/s41598-021-84923-1. PMID: 33686126; PMCID: PMC7940644.
052-433-3121