前立腺がんの手術後に尿もれはなぜ起こる?第3話〜人工尿道括約筋とPRP治療の違いを専門医が解説〜

そえだ腎・泌尿器科クリニック 院長の副田雄也です。

ここまで

  • 第1話:なぜ尿もれが起こるのか
  • 第2話:どう治療するのか

を解説してきました。

では最も気になるポイントです。

「最終的に治るのか?」
「手術しかないのか?」
「もっと体にやさしい治療はないのか?」

結論:多くは治るが、一部改善しない

まず大前提です。

  • 約80〜95% → 日常生活レベルまで改善
  • 約5〜20% → 尿失禁が残る

(EAU Guidelines 2024, Novara G et al.)

👉つまり

「治る可能性は高いが、治療が必要な人も一定数いる」

治療の選択

術後6〜12か月経っても尿もれが残る場合、

👉治療は大きく2つの方向に分かれます

選択肢①

▶ 人工尿道括約筋(AUS)

どんな治療かというと、

尿道にカフ(バンド)を巻き、機械的に尿道を締める装置

を埋め込みます。

特徴として、

高い治療成功率

重症例にも対応可能

であり、現在のゴールドスタンダードです。

● メリット

 確実性が高い
 重度失禁でも改善可能

● デメリット

手術が必要

デバイス関連合併症
(感染・機械故障など)

再手術の可能性

選択肢②

▶ PRP(再生医療)

PRPとは、

自己血を採取→血小板を濃縮→成長因子を抽出し

尿道括約筋に直接投与します。

PRPに含まれる成長因子により

神経再生、筋再生、血流改善を起こします。

👉結果として

括約筋機能の回復を促すことが可能となります。

臨床研究のポイント(Leeら)

  • 前立腺術後尿失禁患者が対象
  • 尿道括約筋へ直接注入
  • 尿失禁の有意な改善
  • パッド使用量の減少
  • 安全性良好

👉重要なのは

「構造を補う」のではなく「機能を回復させる」点

PRPの臨床的な価値

これまでの治療は

支える(スリング)、締める(AUS)

でした。

👉PRPは

「治す力を引き出す治療」

メリット

✔ 切らない(低侵襲)
✔ 日帰り可能
✔ 合併症が少ない
✔ 繰り返し可能

👉患者さんの本音として

「まず試したい治療」になりやすい

デメリット

効果に個人差

複数回必要な場合あり

長期エビデンスはまだ限定的

AUS vs PRP:どう選ぶ?

ここが臨床的に最も重要です。

重症(ほぼ垂れ流し)

👉 AUSが第一選択

理由:機械的サポートが必要

中等症(パッド数枚)

👉 AUS or PRPの分岐点

確実性重視 → AUS

低侵襲希望 → PRP

軽症(少量漏れ)

👉 PRPが非常に良い適応

理由:括約筋機能が残っている、回復の余地がある

なぜPRPが選ばれるのか

患者さんの意思決定は非常にシンプルです。

👉「できれば手術は避けたい」

PRPは、

  • 切らない
  • 痛みが少ない
  • 日常生活への影響が少ない

👉このため

心理的ハードルが圧倒的に低い

BIJIRISの位置づけ

BIJIRISのような治療は

👉PRPと同じ“再生医療カテゴリー”

として考えると理解しやすいです。

現実的な治療戦略

重要なのは「順番」です。

① まずは自然回復+リハビリ
② 必要に応じて手術(AUS)
③ 低侵襲希望ならPRP

👉もしくは

👉AUSとPRPを“並列の選択肢”として検討する

結論

前立腺手術後の尿失禁治療は

👉 しっかり止める → AUS
👉 体に優しく再生 → PRP

という

2つの戦略から選ぶ時代です。

最後に

かつては

👉「手術しかない」

と言われていた尿失禁ですが、

現在は

👉**「選べる治療」が存在します。**

そして最も重要なのは

👉自分に合った治療を選ぶこと

お気軽にご相談ください。

■ 参考文献

  • European Association of Urology Guidelines 2024
  • Novara G et al. Eur Urol. 2012
  • Bauer RM et al. Eur Urol. 2015
  • AUA/GURS/SUFU Guideline 2019
  • Lee PJ et al. Sci Rep. 2021