前立腺がんの手術後に尿もれはなぜ起こる?第2話〜リハビリから手術まで泌尿器科専門医が治療法を完全解説〜

そえだ腎・泌尿器科クリニックの院長副田です。
今回は前立腺がん術後の尿失禁、第2話です。

はじめに

第1話では、前立腺がん手術後に尿もれ(尿失禁)が起こる理由について解説しました。

では実際に尿もれが起こった場合、

「このまま様子を見ていいのか?」
「何か治療をした方がいいのか?」
「手術になるのか?」

と不安になる方が多いと思います。

結論から言うと、

👉 多くの場合、適切な対応を行えば改善します。

そして重要なのは

👉 治療には優先順位があるということです。

尿もれ治療の基本戦略

前立腺手術後の尿失禁は、以下のように段階的に治療します。

Step 1:自然回復を待ちながらリハビリ

Step 2:必要に応じて補助療法

Step 3:改善しない場合は手術・新規治療

👉いきなり手術になるケースは多くありません。

① 骨盤底筋訓練(PFMT:最も重要)

これはすべての患者さんにとって基本となる治療です。

どんな治療かというと、

尿道を締める筋肉(外尿道括約筋+骨盤底筋)を鍛えるトレーニングです。

具体的なイメージとしては、

  • 尿を途中で止めるように力を入れる
  • 肛門を締める感覚

👉これを繰り返す

効果として、

  • 尿禁制回復を早める
  • 尿もれ量を減らす

が期待できます。

PFMTを行うことで、

  • 術後早期の回復を有意に促進
  • 尿禁制率の改善

というエビデンスがあります。

(参考)

  • Anderson CA et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015
  • Van Kampen M et al. Lancet. 2000

重要ポイント

👉術前から開始するとさらに効果的
👉術前から開始するとさらに効果的

大事なことなので2回言いました。

② 行動療法・生活指導

軽視されがちですが、実はかなり重要です。

主な内容としては、

  • 体重管理(肥満は腹圧↑)
  • カフェイン制限(膀胱刺激)
  • アルコール調整
  • 排尿タイミングのコントロール

👉軽症例ではこれだけで改善することもあります。

③ 薬物療法(補助的役割)

前立腺術後の尿失禁は主に腹圧性ですが、

  • 切迫感(急に尿意が来る)
  • 頻尿

が合併することがあります。

その際に以下の薬が使用されることがあります。

  • β3作動薬
  • 抗コリン薬

ただ、

👉純粋な腹圧性尿失禁には効果は限定的なんです。

④ デバイス・補助療法

日常生活の質(QOL)を保つための手段です。

こんなものがあります。

  • 尿取りパッド
  • ペニスクランプ

ただ、これらは

👉「治す」ではなく
「生活を楽にする」

ということを目的としており、これがないと症状が起きることには変わりありません。

⑤ 手術療法(ここが分岐点)

一定期間経過しても改善しない場合、

👉外科的治療を検討します。

■ 男性スリング手術

  • 適応は軽〜中等度尿失禁
  • 比較的低侵襲
  • 自然な排尿

■ 人工尿道括約筋(AUS)

  • 中等度〜重度
  • 尿道を機械的に締める
  • 高い成功率
  • 長期成績が安定

👉AUSは最も確実な治療(ゴールドスタンダード)

(参考)

  • Bauer RM et al. Eur Urol. 2015
  • AUA/GURS/SUFU Guideline 2019

治療を考えるタイミング

ここは非常に重要です。

👉術後6〜12か月は回復を待つ

ただし例外として、

  • 重症例
  • 改善傾向がない
  • QOLが著しく低い

👉早期介入も検討

よくある誤解

「何もしなくてもそのうち治る」

👉半分正しいが不十分

✔ 正しくは
👉**「適切なリハビリをすればより早く改善する」**

「手術しかない」

👉これも誤解

✔ 実際は
👉多くは保存療法で改善

実臨床での流れ(イメージ)

  1. 術後すぐ → 不安定(正常)
  2. 3か月 → 改善開始
  3. 6か月 → 多くが軽快
  4. 1年 → 残る人のみ追加治療

👉焦らず、しかし適切に介入することが重要です。

まとめ

前立腺手術後の尿もれ治療は

✔ 骨盤底筋訓練(最重要)
✔ 生活改善
✔ 必要に応じて薬物療法
✔ 改善しなければ手術

👉という段階的アプローチです。

次回予告(重要)

ここまでで多くの患者さんは改善しますが、

それでも

👉「完全には治らない」
👉「もう少し良くしたい」

というケースがあります。

第3話では

👉「手術か?それとも切らない治療か?」

  • 人工尿道括約筋(AUS)
  • PRP(再生医療)

リアルな選び方を解説します。